2004年前半(1-6月) 日々雑感の目次へ トップページへ
4月19日:法案のままでは、保護されるための要件があまりに厳しく、対象もせまい。修正が必要だ。記事には、英で施行中の類似制度内容がかかげられているが、ここでは省略
京都府の養鶏場で発生した鳥インフルエンザは匿名の通報で発覚した。 通報者がこの養鶏場の従業員だったと仮定した場合、 事態はどうなるか。 法案では犯罪行為の通報しか保護されないので、届け出義務違反の段階になるのを待たなければならない。犯罪を犯していると「信ずるに足りる相当の理由」も備えていなければならない。 これでは、早い段階での通報を抑制しかねない。 六本木ヒルズの回転ドア事故を考えても、内部で危険性に気づいていた人はいたのではないか。 ためらうことなく、しかるべきところに、その危険性を伝えられる仕組みの必要性が浮かび上がった。犯罪とまではいえない法令違反も、法令違反ではなくても個人の生命・身体・財産への危害の恐れが在る場合も対象にすべきだ。 法案の最大の問題は、外部通報の手続き要件が厳しいことだ。 山行とされた英国の公益開示法と比較しても、ハードルの高さは歴然としている。 組織内部や行政機関に通報したけれども、適切な措置がとられず、 外部に通報するのが合理的であると判断できる場合などは、 保護対象に加えるよう修正すべきだ。 この法案を一読した人は「公益通報というのは よほどのことでないと保護されない」と受け止めるのではないか。 公益通報を大事にすることは、公正な社会をつくり、企業のコンプライアンス(法令遵守)経営を促進することにつながる。 そういう意識や文化を日本の社会に醸成することが立法の目的であるはずで、 それが読みとれる内容にするべきだ。
保護される通報内容 | 通報先 | 救済の方法 | |
日本 公益通報者保護法案 |
国民の生命、身体、財産などの利益の保護にかかわる法律(個別に指定) に犯罪として規定されている行為など | 1.通報者の勤務先 2.行政機関 3.その他の外部 ーに大別され、 通報者が保護されるための要件は順に厳しくなる | 解雇などの不利益を受けた労働者が、自ら勤務先を訴えるなどする。 行政機関や捜査機関は原則として介入しない |
米国 内部告発者保護法 |
政府内部での法令違反、重大な管理不備・浪費、権限乱用、公衆の健康や安全への具体的危険(通報者は政府職員) | ▽通報者が所属する政府機関の監査官▽大統領直属の特別顧問局▽報道機関 ーなどで特に制約はない | 特別顧問局に申し立てる。同局は調査し、問題があれば是正させる。 訴訟を起こすこともできる。 |